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中国雲南省の空はとても青い。
その群青の大空に、白い雲が躍動する筋肉のように湧き立ち、空と雲の下には涯もなく緑の樹海が広がっている。
雲南の空と雲と森は、太古からその大自然の姿そのままに、そこに住む民族の息吹とともに今日も生きている。
深い森の奥から弱く強く、うねりながら響いてくる太鼓の音、奇(くす)しき笛の音にあわせ極色彩の民族衣装をまとった人々がさけび、歌いそして踊る。
そこは森の聖域・サンクチュアリ。
恵をもたらす大自然への畏敬の念が、感謝の心が大地の鼓動となって鳴り響き、情熱の坩堝(るつぼ)となってほとばしる。それが雲南だ。
あくまでも空を青く、雲を白く、森を緑に輝かしていた太陽が夕日となって赤々と沈み森が静寂に包まれるとき、昏(くら)い空に月が昇る。大きな満月の中に一羽の孔雀が舞いを始める。
美しいヤン・リーピンの「孔雀の舞」。
ヤン・リーピンは舞いながら桃源郷へ、永遠の郷愁「シャングリラ」の世界へと、夢うつつに誘っていく。
“まさに究極”の世界へと。
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昨年三月、オーチャードホールの「シャングリラ」の感激は、いつしかこのような心象風景となって輝いている。英国の作家ジェームズ・ヒルトンが小説「失われた地平線」に描いた「シャングリラ」はどんな世界だったのだろうか。
雲南に伝わるダイナミックな民族舞踏を芸術の域に高めたヤン・リーピンの「シャングリラ」を、来春三月、東京そして大阪で“再び観劇できる喜び”に、その高ぶる感情を抑えることができない今日この頃である。